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「あ、いや……。べつに仲良くなんてないよ。ただの幼馴染だし、いつもこれが普通っていうか」
「? 笙悟、誰と話してるの?」
不思議そうに見つめてくる高原。
狭野は隣に立つ少女を指差して、
「この子のこと、見えてないの?」
あまり期待せずに聞いた。
「この子……? って、何それ。もしかして冗談のつもり? 誰もいないけど、幽霊が見えてるとかそういう設定?」
ぷっと笑いを堪えるように高原が言って、狭野は改めて隣の少女を見上げた。
(やっぱり、僕以外には見えないんだ)
容姿が優れていること以外、一見何の変哲もない中学生くらいの少女。
その姿は狭野以外の人間には見えておらず、おそらくは触れることもできない。
実体がない。
ということは、やはり高原の言う通り、彼女は幽霊なのだろうか。
今まで自分に霊感があるなんて、自覚したことはなかったけれど。
「あなた、『しょうご』っていう名前なのね」
「えっ? あ、うん」
急に尋ねられて、思わず声がひっくり返りそうになった。
「そう……。良い名前ね」
彼女はそう呟きながら、優しげに目を細める。
その眼差しは、まるで赤ん坊を見つめるときのような穏やかさに満ちていた。
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