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やがて河川敷の土手を上り、その先にある鳥居を潜って境内に入ると、今度は屋台の代わりに背の高い木々が両脇を埋め尽くす。
鬱蒼と生い茂る雑木林が、神社全体をぐるりと取り囲んでいた。
辺りは暗く、参道に沿って吊るされた赤い提灯がなければ、その場は一面闇に包まれていただろう。
淡く照らされた道を進めば進むほど、お囃子の音が近づいてくる。
そして、
「龍臣くーん! がんばってー!」
複数の黄色い声が、奥から上がった。
見ると、道の先には人だかりがあり、さらにその奥に見える神楽殿ではすでに演目が始まっている。
松明が灯された舞台の上では、刀を持った袴姿の男性と、そして、狩衣姿で鬼の面を被った子どもとが対峙していた。
男の方はこの神社の宮司であり、鬼の方はその息子――祓川龍臣だ。
「ほら見て、笙悟。あの鬼の役、今年は龍臣が演じてるのよ!」
高原が舞台を指差して言った。
祓川は同じ小学校に通う同級生だ。
神社の跡取りであり文武両道、さらには恵まれた容姿も相まって、同年代の女子たちから絶大なる人気を誇る。
狭野はやっと辺りを見回すのをやめると、ゆるゆると演者の二人を見上げた。
「鬼の役ってあの……刀でビシバシ叩かれるやつ? 大人でも痛いって聞くけど大丈夫なの?」
心配したそばから、宮司の振り上げた刀が勢いよく、鬼の肩口へと打撃を加えた。
ドッ、と重い音を立てて、それは鬼の柔らかな肉へと食い込む。
模造刀のため皮膚が切れるようなことはないが、容赦なく振り下ろされたそれは明らかに痣を残すほどの威力があった。
あまりの痛みに耐えきれなかったのか、鬼はその場へ崩れ落ちるようにして倒れ込んだ。
「龍臣くん!」
すかさず女子たちの悲鳴じみた声がそこかしこから上がった。
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