天才のままならない人生 〜異能力 ten minutesの悲劇〜

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そう言われて、大学の学生専用の駐車場。この大学はそこそこ敷地が広いため、広大な駐車場を有しているのだが、速水が指定したのはこの広い駐車場の中でも人気(ひとけ)のない、校舎の入り口からは一番遠い場所だった。 そこにそろりと車を停める。速水の姿はまだない。 僕が、シートの背もたれを倒してリラックスした状態で待とうとすると、いきなりガチャとドアが開いて、速水が助手席に乗り込んできた。その体重で、車が左右に揺れる。バンッとドアを力任せに閉める音が鳴り響いた。 「お、おい」 「高村。悪いが俺は急いでる。だから駆け足で話す」 僕は驚いて、飛び起きた。速水の顔を見ると、切羽詰まったような表情を浮かべている。 「えぇ、いきなりなんなんだ……けど、トイレか? ウ◯コ?」 急ぐ理由はそれしか思いつかない。 「え⁉︎ あ、いや。そ、そういうわけじゃないけどな……」 「……ってかお前、ほんと怪しいな」 「あああとにかく時間が10分しかねえんだ‼︎ いや、ここに来るまでにそのうちの貴重な1分を要してしまっている、あと9分しかねえ。急いで話すぞ」 「10、9分⁇ ……お、おお。わかった」 いや、わかったと言いつつなんかわからんが、すごい気迫というか緊迫感だ。 僕は、口の中に溜まっていた唾を飲み込んだ。 ✳︎✳︎✳︎ 人生はままならないことだらけだ。自分の思い通りにいく人生があるならば、俺はそれを心から欲している。 「人生は思い通りだ。なんの障害もないもんね」なーんて声高々に叫んでしまう種族の人間。ちょっと痛いかなって思うけれど、実はこの俺だって、大声でそう叫んでいい権利を持っている。
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