天才のままならない人生 〜異能力 ten minutesの悲劇〜

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背の高さやスタイルの良さはもちろん、自他共に認めるイケメンである。頭もそこそこ良いし、学校のテスト順位は小中高合わせても、一度も学年トップ5から外れたことがない。日本の頭脳、T大に一発合格。そこそこどころじゃないなこれは。天才ってやつだな。うん。 そこでだ。 問題は性格だ。性格だって良くなきゃ皆んなに嫌われてしまう。けれど、俺はそこもカバーしてるんだぜ。自分で言うのもなんだけど、優しさや思いやりにあふれていて、人当たりも良いってなもんだ。 これだけ揃っていれば、人生は望んだ通りに進むのだろうな。この意見に異論のある人がいたら、手を挙げてくれ。 ✳︎✳︎✳︎ 「ちょっと待って」 僕は、両手を上げてストップし、話の腰を折った。 「なんだ、高村。異論があるのか⁇」 「いやいやお前がイケメンで天才ってことに異論はない。それを自ら主張するのはどうかと思うけどな。だけどなあ。僕は今、いったいなにを聞かされているんだ?」 僕が不服な顔を作ると、速水が僕の手をバシンと払いのけた。 「おい話を止めるんじゃないっ。急いでいると言っただろう。序章だけに1分半も費やしてしまったじゃねえか」 「序章⁇ ……ちょっと何を言ってるのか意味がわかんないっていうか」 「とにかく急いでるんだっ。いいからまずは聞け‼︎」 「お、おう」 速水が唾を飛ばしながら、まくし立てる。僕はその勢いに怯んで、大人しく言葉を引っ込めた。 ✳︎✳︎✳︎ 続きを話すぞ。 とにかく俺はイケメンだし頭もいいし性格もいいのだから、人生思い通りになるはずなんだ。自画自賛が過ぎてキモっ。との声が聞こえてきそうだけれど、敢えて先を続けると、俺は俺のこの人生については大いに不満を持っているのだ。
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