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「ヤベ……外した!」
啓五は二十点の三倍で六十点になる箇所を狙っていたようだ。確かにそこに命中すれば高い点数が得られるが、結局外してしまったので高得点にはならなかった。
調子が悪い。もしくはお酒に酔ってうまく当てられなくなってしまったのだろうか。
ゲームをはじめた最初は調子が良かったように見えていたのでちょっとだけ申し訳ない気分になったが、
「これじゃ、陽芽子にキスしてもらえないな」
と呟かれた瞬間、やっぱり調子が悪いぐらいで丁度いいかも、と思ってしまった。
「って、負けたじゃん」
「やった、私の勝ちー!」
結局二十四投目も狙った通りの場所に刺さらなかったらしく、最終的に表示された得点を見ると、啓五の得点よりも陽芽子の得点のほうが十点ほど高かった。
「なんだ、キスはお預けか」
「しませーん」
ふっと笑った啓五に、勝ち誇った笑みを返す。
しかし冷静になって考えてみると、啓五は最初から負けるつもりだったのかもしれない。本気でキスしようと思っていたわけじゃないから、陽芽子を楽しませるためにわざとに負けてくれたのかもしれない。
(そっか、それはそうだよね)
啓五が陽芽子のキスを本気で望んでいるとは思えない。だからダーツの経験がない陽芽子に、からかいながらもちゃんと遊び方を教えてくれた。
新しい遊びを覚えた陽芽子は、楽しい時間を過ごせた。と思ったのに。
「じゃあもうひと勝負」
「え……またやるの!?」
「いや、ダーツじゃなくて」
大人の遊びはまだ終わらず、第二ラウンドへ突入するらしい。
「上の階にビリヤードがあるんだ」
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