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13.大人の遊び:B
環にビリヤードを使いたいと申告すると、思いのほかあっさり許可が下りた。
「えっ、上がっていいの……?」
上階にはVIPルームがあると聞いている。そんな特別な場所に、陽芽子のような一般人が立ち入ることは許されないだろうと思っていた。黒い螺旋階段を上がろうとする啓五におそるおそる訊ねると、不思議そうな声が返ってくる。
「ん? 別にいいだろ、誰もいないし。ほら」
啓五は挙動不審になった陽芽子に手を差し出すと、階段にヒールが引っかからないよう丁寧にエスコートしてくれる。だから陽芽子もその手に掴まって、慎重に階段を上がっていった。
「広い……!」
螺旋階段の先はテーブル席の真上に相当する場所らしく、構造はほぼ一緒だった。
床と天井が白く壁が黒いフロア。黒塗りの大きなテーブルをぐるりと取り囲むように一人掛けの豪華な椅子が五つ、一番奥には見るからにふかふかな三人掛けのソファがある。
さらに今は中に誰もいないが、下の階にあるものと全く同じバーカウンターとバーラックが壁際に備えてある。天井にはヨーロッパのどこかの城から持ってきたのではないかと思うほど、豪華なシャンデリア。確かにここは、間違いなく無駄に贅沢な部屋だった。
「オフィス街にあるただのバーにしては、豪華だよね?」
「ああ……まぁ。ここは祖父さんの隠れ家みたいなもんだからな」
啓五が自分の言葉に自分で呆れたように笑う。
何か事情があるらしいが、ささやかな疑問はすぐに消えていった。―――奥にあったビリヤード台に寄りかかった啓五が、視線で陽芽子を誘うから。
「私、ビリヤードはやったことあるよ」
その挑発に乗るように、陽芽子も啓五に笑顔を向ける。
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