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今日もリッキーはいつの間にか仲間とはぐれており、壁の側面にいた。下を見ないよう見ないように壁を登る。仲間がこの上に行ったのだ。きっとこの上に甘く美味しいものがあるはずだ……。リッキーは他の仲間と違い、酷く臆病だった。フェロモンがわからないのもあるが、触覚も退化しているリッキーは普通アリにはないものがあった。そのせいで、他の仲間は感じることのない恐怖を余計に感じる。壁の側面で恐怖を感じるなど臆病者だと言いさきに行ってしまった。仲間たちは高さなど感じていないのかもしれない。障害物があり落下することの恐怖を感じないのかもしれない。リッキーは高さも障害物も、落ちることも全てが怖かった。怖くて怖くて足がすくんだ。実際落ちたことはあったが、触覚が退化しているのだから、痛みはない。死ぬこともなかった。それでも根源的な恐怖は拭い切ることができなかった。
やっとの事で上にたどりつき、見渡すと、仲間たちはもういなかった。獲物はあるのに逃げたのだろうか。またフェロモンをだし、仲間の帰りをまつ。
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