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最終話 <俺は負けねぇ!!>
俺は舞台袖で出番を待っていた。
「本年度の日本アクターズアワード、
助演男優賞は、佐伯博也さんです!」
大きな拍手とスポットライトの中、俺は舞台の真ん中に歩いて出た。
「プレゼンテーターは
昨年度の助演男優賞を受賞した中野智巳さんです」
トロフィーを抱えた中野がゆっくりと歩いてきて、
それを受け取ると、俺たちはどちらともなく肩を組んだ。
「あ、こいつのゲイ説は嘘なんで!」
俺を指差して中野は言った。
「さて、来年はどっちが主演男優賞かな?」
「負ける気がしねぇ!」
俺たちは睨み合いながらも「ははは!」とお互い笑いあった。
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授賞式の後、しばらくして俺は中野の家に招かれた。
「さえきさーーん!」
玄関から元気よく拓海くんが出て来て、
その後ろに熊坂さんが顔を覗かせた。
「拓海くん、少し大きくなったな!
熊坂さんはヘアスタイル変えたんだね」
そう言うと奥から中野と熊坂さんが出て来て、
「わー、やっぱりだまされたーー」
と笑顔で言った。
「え? あれ?」
俺が戸惑っていると、熊坂さんが言った。
「双子の妹の小桃です。
今、愛媛から遊びに来ていて」
「え? 双子だったの!?」
俺は二人を見比べた。
「美しく咲く小さな桃の花。
二人が生まれた時、庭の小さな桃の木が
満開に花を咲かせていたんだって」
中野がそう言い、
俺は「へー」と言いながらリビングに通された。
「廃れヒーローは彼女のために再び立ち上がる」完
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