俺が駄女神様を拾った結果、異世界人との戦いになった

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神様と俺は、テレビを見ていたら、めがねを忘れてしまった。のっけからあり得ない話だが熱中症の行き倒れを助けたらレベルの低い神様だったのだから仕方ない。その証拠に神通力で家政婦の代わりが務まる。彼女はリボ残高を減らす代わりにカップ麺と缶詰の山を召喚してくれた。俺が死ぬまで無限に提供するという。ありがたい神様だ。炊事洗濯掃除の御利益もある。 そんなだらだらした毎日。出勤、帰宅、寝るのルーチンに彼女が加わった。 ある日、神様と俺はテレビを見ていたら、めがねを失っていた。 オカルトライトというPS7のVRめがねだ。中古とはいえ八千円はする。まぁ、いい。年末にはPS10が出る。 そう言えば、神様と初めて会った時もテレビとめがねの違いが分からないと、神様は言ったな。 そりゃそうだ。形而上学的生物にとって現実と虚構も同じだ。 神様と俺が観るテレビは、テレビではなく、パソコンのモニターであった。これも厄介なもので精巧な仮想現実といえどガチの神様からしたら解像度の劣る異世界だ。神様は対戦プレイに乗り気でなかった。どうせそこらへんにポーンとVRめがねを放置していたのだろう。 そろそろ居候の正体がバレる。面倒な事になる前に帰って欲しいが神様は異世界転移の方法を失念していた。俺達はリハビリに励んでる。 「さて、神様、俺は何から説明したらいいのか......」 俺は、神様がここに来た理由を、神隠しで消えた事にした。原理的にはそんなものだろう。 「そして、君を助けたのは転生者だったわ」 神様の癖に情けない事を言う。 「俺だって神様が異世界にいたってこと自体が信じられない」 だがしかし、転生者が天賦(ボーナス)(スキル)を使って、俺を助けたと言いわれると、信じられないがそうかもしれない。コンビニで立ち読みしていると車が飛び込んできた。それでも無傷で助かった。彼女の力では無理だ。 こちら側に転生者がうようよいる。とっつ構えて命の恩人へ伝言を頼み、ついでに神様を引き取ってもらおう。 では具体的にどうすればいいか。答えは書店の本棚にある。異世界転生だらけだ。犬も歩けば棒に当たるほどトラック事故の多い場所へ行けばよい。俺は通学路の見守りボランティアとして事故多発地帯に立った。三叉路で横断歩道が剥げかかっている。おまけに茂みが信号を隠していて道路標識も見づらい。 「ある意味ここって穴場じゃね?」 俺が不謹慎発言している間に急ブレーキ音がした。 「うわーっ」 運転手が頭をかかえている。「ほれ、神様、早ょ」 俺は促した。死人は彼女の管轄だ。作戦通りに行けば転生者が介入してくるはずだ。 案の定、車体の下でモゾモゾと人影がうごめいている。やがてレスキュー隊員が被害者を救出した。ピンピンしている。 人垣を飛び越えて神様がふよふよと戻ってきた。 「どうだった?」 俺が首尾を尋ねると神様はがっくりとうなだれた。 「失格だってさ」 「ファッツ?」 彼女が言うには天国を含めて異世界はとうに支配されていた。考えてみれば当たり前だ。異世界で一旗揚げる奴が続出すると最後のフロンティアはスキマになってしまう。異世界転生のシステム自体を開拓した奴が現れたのだ。 彼女らはその仕組みを用いてリアリティーショーを催していた。 「めがねがフラグだったんだってさ。無くした時点で罠に嵌まった。こうやって君とタッグを組んで動くことで失格コースを歩まされたの」 なんということだ。俺は頭を抱えた。異世界転生から脱落したということは彼女にも寿命が設定され人間と同格になる。つまり状況はどうあれ、彼女は俺を死の淵から救ったきっかけの一つ、いわば恩人ということになる。 「どーすんだよ。これから」 俺は途方に暮れている。元神様、つまり今はただのババアはいずれ要介護になる。 「せっかくボランティアになったんだし。福祉の方面で仕事をさがしては?」 神様、もとババアは勝手な事を言う。身もふたもない解決策は彼女を行方不明者として役所の然るべき部署にゆだねることだ。認知症で身元不詳の行旅病人という扱いだ。 しかし恩人にそんな非道な仕打ちは出来ない。 「やれやれ」 俺は求人誌をめくっている。元神様は今や俺の大切な人になってしまった。だが悪い事ばかりではない。高齢者に対する色眼鏡をなくすきっかけを得た。世の中には彼女の様に不可抗力で不遇をかこう高齢者がいるのだ。ネット社会は冷たい。ただただ高齢というだけで親の仇の様に憎む。自分たちも老いるし、その親はどうなのだろう。テレビをつけると老人虐待を報じていた
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