0-1-2.全て

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 ちっぽけな砂粒の一つとして、  波にのまれて消えて行くだけの人生に  君という光の存在があったことはこの上ない幸いだった。  なぜ手に入れた宝物を手放すのかと、  なぜ想いあうのならば他人に託せるのかと、  非難する声も勿論あるだろう。  ただその声に言いたいのは、この恋は一時的なものではないということだ。  今だけの恋ならば、  全てを捨てても、誰を傷つけても、  君の意志も関係なく、  傍にいさせることだって強要したかもしれない。  けれどそうではないと、魂が気づいているから。  もし運命の歯車がもう、君と出会わせるチャンスを作れないとしても。  君という人間を知った以上、これ以上我儘にはなれない。  それは意気地なしだからとか、そういうことじゃなく。  君が本来持っている輝きを、決して失くすことのないように。  君がいつまでものびのびとして、全てを愛で包めるように。  君が迷いなく、怖気づくことなく自分らしく生きられるように。  君が光でないと、闇の中にいることに気づいてももらえなくなりそうだから。  もし、出会えたら  前の記憶なんか無くても、少しは特別に想ってくれるかな。  もし、出会えたら  間違いなく君を想うから、その時は覚悟して。  君に触れるよりももっと、君が在るということにドキドキしている。  君が誰を想おうと構わない。  けれど君をこの世で最上に想っていることだけは分かって。  闇の中にいるからこそ、君が欲しいと心が叫ぶ。  果てなき深海から望む、見えないけど確かに上に在る太陽のように。  この命を照らしてくれ。  意味のある命だと、浮き彫りにしてくれ。    君よ、光であれ。  君よ、その光で宇宙の隅々までを、照らせ。  その光で、闇は消える。  闇は愛を学び、希望を持てることを知る。  君が確かに、君のままで此処に在ること。  それこそが願い。  それこそが、全てだから。
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