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「ついに完成した!」
私の目の前には自分そっくりの人物が透明なカプセルの中に浮かんでいた。
長い時間懸けて作ったクローンだ。
そのクローンには自分の記憶を全部入れてあり、もはやもう一人の自分と言っても過言でない。
スイッチを押して培養液を抜く。
自然と口元が緩む。
私はある願望を叶えるために、このクローンを作った。
それは法的にも倫理的にも反したものだが、渇望せずにいられないものだった。
カプセルが開き、裸のクローンが目の前に立った。
声を掛けると、目を開き、自分と同じ顔をした私を見て、驚いた顔をした。
道具はすでに傍らに用意してある。
私はこれから願望が叶うことに興奮して満面の笑みを浮かべた。
その前にクローンの体を拭こうと、後ろにあるバスタオルを取ろうした時だった。
胸の辺りに激痛が走った。
触れて見ると、背中から傍らに用意していた刃物で刺し抜かれていた。
驚いていると、刃物は抜かれ、血がどっと出た。
私は床に倒れた。
薄れゆく意識の中で見たのは、満面の笑みを浮かべて、血の滴る刃物を持った裸の自分だった…
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