幸せというもの

幸せ

ある日、コンビニの帰り。
青信号の横断歩道で車に轢かれた。
救急車で搬送され足を余儀なく切断される。

運が悪いだけだろうか。

ある日、咳が辛く会社を休んだ。
抑えたハンカチに血が付いているのを見る。
念の為、病院で検査したところ食道癌と告げられた。
ステージⅣ、手術さえ出来ないステージだ。
いわゆる末期癌。
余命は…。

病気の原因ってなんだろう。

ある日、春になったばかりのこんにち。
ふきのとうを取りに山へ出かけた。
思ったより大収穫だった。
どうやって味わおうか。
天ぷらがいい。
ふきのとうを揚げているとチャイムがなる。
近所の仲の良い友達の来客だ。
揚げている事を忘れ玄関で話し込む。
火災報知器がなる。
パニックになり水をかけてしまった。
お家は大炎上…。

何が原因だったのだろう。

ある日、大雨の日に大地震が起きた。
家の裏山が崩れ、家が崩壊した。
共に僕は埋まって息が出来ない。
いつか大きな地震が起きたら
崩れる日が来るのではないかと思っていた。

日頃、どうすれば良かったのだろう。

ある日、夏真っ只中。
たまには新鮮さを味わいたくて
いつもと違う場所で友達と海水浴を楽しんでいた。
自分たち以外人は見当たらない。
泳ぎは得意だ。
岸から少し離れ戻ろうとしたが
遠ざかるばかり。
離岸流だと気付いた時には
沖に流されていた。
自力で岸に辿り着くことはなかった。

お願い…。
神様なんて普段信じていなかった。
だって、宇宙があって地球があるんだから。
この世に神様がいるわけない。
いる場所なんて見当たらなかった。
天国とか地獄とか馬鹿げていると思ってた。
でも…もし、いるとしたらお願いがあります。

交通事故にあいたくない。
事故前の私に時間を戻して下さい。

病気になりたくない。
病気になる前の私に時間を戻して下さい。

火事になって欲しくない。
チャイムがなった時に時間を戻して下さい。

裏山が崩れてほしくない、
地震が起きる前に時間を戻して下さい。

溺れたくない。
海水浴の前に時間を戻して下さい。

分かった。
全知全能の神様の私だ。
願いを叶えてあげよう。
だが、本当にその願いで良いのか？

はい。お願いします。
では、時間を戻してあげよう。

交通事故の前に。
病気になる前に。
火事になる前に。
地震が起きる前に。
海水浴の前に。

願いは、叶えてやった。
幸せか？

不幸の因果と叶える願いは一致していない。
原因が取り払われる願いではなかった。

原因が、ある限り再発の可能性がある。
そんな事、分かりきっている。

では時間を戻して下さいではなく
原因をなくして下さいと願うべきではないか。

原因が分からないのであれば
交通事故に合う可能性をなくして下さい。
病気になる可能性をなくして下さい。
火事になる可能性をなくして下さい。
地震が起きる可能性をなくして下さい。
離岸流が起きる可能性をなくして下さい。
と願うべきなのか？

違う。
この世の道理を変えてくれという願いは違う。
あまりにも身勝手だ。

そもそも神様に願う事自体、他力本願だ。

地球に生が誕生して以来
自分と自分達の力で解決した種だけが生き残った世界だ。

原因は、気をつけていないで生きてきた事にある。

青信号でも気をつけよう。
健康診断を受けて自分の変化に気付こう。
火を扱う時は慎重になろう。
家の周りの災害を日頃から想定しよう。
慣れない場所で遊ぶのはやめよう。

神様。
相変わらず私は神様を信じていない。

今日は、何もする事なく
いつもの挨拶。
いつもの買い物。
いつもの食事。
決まった時間に起き
決まった時間に寝る。

幸せは感じない。
毎日が、つまらない。
でも、
事故にはあっていない。
病気になっていない。
家は燃えていないし災害にも無縁。
もちろん溺れてもいない。

神様、お願い。
幸せを感じないのは何故か教えください。

分かった。
全知全能の神様の私だ。
願いを叶えてあげよう。
だが、本当にその願いで良いのか？

はい。お願いします。
では、教えあげよう。

幸せを感じる者は幸せ感じようと努力している者だ。

願いは、叶えてやった。
幸せか？