Chapter3−3 三人目の祝辞

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『ユージ、お、落ち着いて、ね』 「そいつと代わってよ」 『え?』 「こっちとの時差で今そっちは夜だろ。家から電話してるんなら、今そこに旦那さんもいるんだろ。俺がタカシさんとやらと話す。代わって」 『えっ、い、今はここにはいないっていうか、留守っていうか……』 「じゃあ確実に家にいる時間を教えて。その時間に電話するから。時差でこっちが深夜になったって早朝になったってかまいやしないよ」 『で、でもさ』 「俺に会わせられないような人なわけ?」 『あ、いや、心の準備が、だってユージに会わせるなら──って、え、ちょっと、あっ、もう!』 「マキさん? もしもし?」  電話口から雑音がした後、再び静かな環境音に戻った。 『代わりました』 「あ?」  男性の低い声がした。ユージは零コンマ数秒で声を正体を察した。 『お初にお目にかかります、篠宮牧さんの連れ合いのウラゾエタカシと申します。ユージ・カリヴァンさんですね、息子さんの』 「ウラゾエタカシ?」  日本で過ごしていた頃はあまり深く学校の勉強ができず、シティに来てからは日頃から言語が英語だったユージは、一瞬漢字の変換が遅れた。 『浦島太郎の浦、添付の添、貴族の貴に(こころざし)。  ──浦添貴志(うらぞえたかし)です』  相手は、ユージの境遇をあらかじめ心得ているのか、スラスラと自らの漢字を言い添えた。
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