Chapter3−3 三人目の祝辞

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『挨拶が遅れてしまって大変申し訳ありません』  声の低さとともに言い方も物腰が低かった。  まともだ。 「……いつもマキさんがお世話になってます」  どんな罵声を浴びせてやろうかと思っていたユージにとっては、そう返すのは(はなは)だ不本意だった。(つの)を折られた気分だ。 『世話になっているのはお互い様ですね。牧ちゃんから聞いたかとは思いますが、この度私たちは入籍させていただきました。本来、息子であるあなたには入籍前に一度ご報告を上げるべきかとは思いましたが、いつご報告してもカリヴァンさんは似たような反応をなさるのではと思いまして、お叱りを受けるならしっかりと責任を取ったことを証明してからのほうが良いと考えました』 「あ、はあ」 『それで、牧ちゃんの息子さんであればぜひ下の名前で呼びたいのですが。あなたさえ良ければ』 「好きにしてください。そんなことより、責任を取ったとおっしゃるのなら、どうして入籍まで三年もブランクがあったのかを教えていただいていいですか」 『説明と言っても、こちらにも事情というものがありますからね。もちろんどうしてもとおっしゃるなら、すべてを包み隠さずお話ししても良いですが。失礼ながらあなたのほうも、三年間にあったことすべてを、特殊な事情ゆえに疎遠だった母親へすべて洗いざらい話すわけにはいかないのかな、と想像します。三年間お互いに何をやっているかをあまり連絡していなかったのは、お互い様でしょうし』  ギクリとした。ユージとしても、レイを手放したことや、付き合っている彼女がいること、PTSDにかかっていたこと、そのせいで休職をしていたことなどは、一切マキに言わなかったし、これから言うつもりもなかった。
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