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『だから牧ちゃんをあんまり責めないでやってほしいのです。お叱りは私が引き受けます。予定していた入籍から三年もラグがあったのは、牧ちゃんと入籍するつもりがなかったからではありませんので、そこはご安心くださればと思います。ご心配せずとも、私はできる限り全力で牧ちゃんを幸せにすると約束します』
ユージは黙るしかなかった。しばらくの無音を聞いたタカシは、電話口で軽く笑った。
『いま「こいつ、信用ならない」って思ってます?』
「そういうわけではありません」ユージはムキになった。
『正直に話してくれていいんですけどね。隠されるより言ってくれたほうが、こちらは何かとやりやすい性質でね。私は言外の意味や表情を読み取るのが苦手なもので』
「信用も何も、俺はあなたのことを何も知りません」
『三年間、最低限の接触以外は避けてきたけれど、いざ母が結婚するとなると、それはそれで焦ってしまうんですね。牧ちゃんをどうか信じてあげてくださいと言いたいところですが、信用できないのも無理はないか』
なんなんだこいつは。
「失礼だな、あんた」
『出すぎたことを言ったかな。申し訳ありません』
タカシは言葉と裏腹に、口調に詫び入れるそぶりがない。
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