Chapter3−3 三人目の祝辞

8/49
前へ
/541ページ
次へ
『だから牧ちゃんをあんまり責めないでやってほしいのです。お叱りは私が引き受けます。予定していた入籍から三年もラグがあったのは、牧ちゃんと入籍するつもりがなかったからではありませんので、そこはご安心くださればと思います。ご心配せずとも、私はできる限り全力で牧ちゃんを幸せにすると約束します』  ユージは黙るしかなかった。しばらくの無音を聞いたタカシは、電話口で軽く笑った。 『いま「こいつ、信用ならない」って思ってます?』 「そういうわけではありません」ユージはムキになった。 『正直に話してくれていいんですけどね。隠されるより言ってくれたほうが、こちらは何かとやりやすい性質(タチ)でね。私は言外の意味や表情を読み取るのが苦手なもので』 「信用も何も、俺はあなたのことを何も知りません」 『三年間、最低限の接触以外は避けてきたけれど、いざ母が結婚するとなると、それはそれで焦ってしまうんですね。牧ちゃんをどうか信じてあげてくださいと言いたいところですが、信用できないのも無理はないか』  なんなんだこいつは。 「失礼だな、あんた」 『出すぎたことを言ったかな。申し訳ありません』  タカシは言葉と裏腹に、口調に詫び入れるそぶりがない。
/541ページ

最初のコメントを投稿しよう!

50人が本棚に入れています
本棚に追加