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「あんた、どこで働いて何してる人だよ?」
『公務員です──ああ、地方のね。市役所の窓口です。現在は北陸に住んでいます』
──公務員? だからこんなに電話慣れしてるのか。口調も、慇懃無礼な態度も。
「年齢は? どこでマキさんと知り合った? 何を思ってマキさんと入籍しようと思った? 俺たちのことをどこまで把握している?」
『まあまあ、落ち着いて。これ、牧ちゃんのスマホだから。詳しいことはまた改めて牧ちゃんか私からご連絡します。次にお話をするときは、どんな質問にも答えられるように努めます。馴れ初め等々、必要であれば、ね。それに、あなたにもあなたの予定があるでしょう。今日のところは取り急ぎご報告のみということで、これにて失礼させていただきますが、よろしいでしょうか』
「……はい」
『牧ちゃんに代わる?』
「けっこうです」
ユージは乱暴に通話終了ボタンをタップした。これが固定電話だったら、盛大に電話を切る音を聴かせられると言うのに。
「くそが」
ユージは悪態をついた。自分でもなぜ、ここまで鬱憤を募らせているのかわからなかった。
「ユージ」
ユージが座っていたベンチの端から、ひどく慎重に、恐る恐る声をかけてくる者がいた。ユージはギクリとして顔を上げ、声のしたほうを見た。
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