Chapter3−3 三人目の祝辞

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「書類一つでこんなに変わるのかよ……」  ユージはスマートフォンを放り投げて、座っていたソファへ体を倒し、ローテーブルに置いてある卓上スピーカーをちらりと見た。 「レイヴィス」 『お呼びですか、ミスタ・カリヴァン』  ユージの声に街の〝守護神〟たるAI・レイヴィスが、すぐさま応答した。 「あのさ……シティでの結婚制度ってどうなってるんだ?」 『法律婚と契約婚のどちらを言及なさっているのでしょうか?』 「え?」  ユージは思わず上半身を浮かせた。 「契約婚?」 『先ほどU.C.ネットワークを踏んで海外のブラウザで検索をかけていらっしゃったようなので、レコメンドした意見を申し上げますと、『契約婚』は日本国で言うところの事実婚と法律婚の間と考えていただければよいかと思います。同居の義務が発生し、税務関連は法律婚の夫婦と同じ権利を望めば受けられますが、財産は個別に管理し、遺産は遺言によってのみ相続が認められ、父親を証明するための子の認知には申請が必要な婚姻のことです』 「……俺が誰かと結婚したらどうなるの? 国際結婚ってことになるの?」 『シティがもともと多国からなる招聘民によって構成されていますから、招聘民とシティ出身者との結婚が国際結婚と呼ばれることは、あまりありません。招聘民同士も然りです。あなたは現在就労ビザでこちらにいらしていますが、シティ生まれの方、あるいは招聘民でも永住権を持つ方と結婚すれば、永住できるようになります。役所での助成金等々、福祉を受けられる範囲は広がると思いますね。その他同居義務、貞操義務、遺産や財産諸々は、シティの約款をご覧いただければと思いますが、ここで読み上げますか?』 「い、いや、いい」 『他にご用件は』 「ない。ありがとう」
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