Chapter3−3 三人目の祝辞

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 ユージはなぜ、自分がタカシにつっかかりたくなってしまうのかを、やっと理解した。  相手のほうが、よっぽど大人だったからだ。  あれほど重い責任をさらりと、逃げるそぶりもせずに、さも当たり前のことのように、自分の伴侶の息子に言ってのける大人の余裕が、ユージには羨ましかった。タカシは目に見えないところで覚悟をしているらしい。その覚悟を電話越しに感じたからこそ、相手と会話をしたときユージは自分の幼稚さと無責任さを露呈している気分になっていたのだ。  それこそ、ユージは通話中、マキの話など初めからしっかり聞く姿勢を持っていなかった。言いたいことだけぶちまけて、マキの意見は遮ろうとした。たとえユージにとってひどい母親だったとしても、一人の人間を相手に取る態度ではなかった。  二人の通話をタカシは横で聞きかねたのだろう。だからスマートフォンをマキから無理矢理にでも取り上げて、ユージの横暴とも言える態度に対し、冷静な理詰めを駆使してマキを守ったのだ。  こんな大人に会ったのは、ユージにとって生まれて初めてのことだった。 「恥ずかしい。土に埋まってしまいたい」  スマートフォンがバイブした。クッションから顔を上げスマートフォンを取ると、ディスプレイにポップアップが出ていた。 『浦添貴志(タカシ)です。こちらでもよろしくお願いします』 『そちらはそろそろ就寝の時間でしょうか。こっちはいま昼休みです』  タカシからのメッセージだった。そういえば、タカシ宛に空メールを送った後、メッセージでやり取りしようと言われていて、先方にメッセージIDを教えたのだった。
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