Chapter3−3 三人目の祝辞

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『夜分にすみません』 『実は、シルバーウィークと有給を組み合わせて、長めの休暇が取れたので、』 『一度あなたの住むラウドシティを訪問しようと思っています』 『そのとき、よかったら会いましょう』  連続するポップアップを眺めながら、ユージは起き上がった。一瞬頭が混乱した。  浦添夫妻が、ラウドシティに来る?  返信しようと慌てて画面のロックを外し、メッセージアプリを起動した。しかし、起動したところでもう一通、メッセージの吹き出しが出た。 『ラウドシティ旅行は牧ちゃんには内緒なので、二人で』 「は!?」  ユージは仰天し、動転した。すぐさま返信を打ち込んだ。 『何言ってるんです?』 『牧ちゃんがいないほうが、色々と話しやすいこともあるでしょう。男同士(笑)』 『困ります。マキさんに許可を取ってから来てください』 『なんの許可?(笑) 』  『あなたに会うのが許可制だとは知らなかった(笑)』 『後で怒られても俺は知りませんよ』 『やったもん勝ちですよ。牧ちゃんは怒ってもそんなに怖くないし』 『妻を置いて一人で旅行?』 『牧ちゃんには職場の有志で組んだ旅行と言ってあります。何か聞かれたら口裏を合わせてくれると嬉しいです』  『それに、最近では結婚後の一人旅行も珍しくないですよ』  『というか、珍しい以前に、お互い了承してればそれでいいんです。我々の場合』 『いや、俺が困ります』 『そうですか』  『一目会いたかったけど。どうしても都合がつかないのであれば、観光だけして帰ります』  『下記は日程です。もし気が変わって会えそうなら、いつでもメッセージください』  最後のポップアップの下に、タカシがシティに滞在する予定の日程が送られてきた。ユージは二十分ほど放心して、再びメッセージを打ち込んだ。 『なんで俺に会おうなんて思うんです?』  すぐに返信が来た。 『だって、牧ちゃんの息子さんだもの』  『どういう人かすごく興味ある。それだけです』  ユージはスマートフォンをソファへ投げつけた。 「てめえはミーハーかッ!」
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