Chapter3−3 三人目の祝辞

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「牧ちゃんには見せないから、ユージくんも入って」 「いやです」 「だめですか」 「絶対にいやです」 「そうですか。残念だな」  タカシはまったく残念がるそぶりもなく、淡々とスマートフォンをしまった。二人は後部座席に乗り込んだ。車が音もなく滑り出す。 「ねえ」タカシはこちらを見ずにユージへ声をかけた。「なんで私に会おうと思ってくれたんです?」  ユージは質問に対する答えをあらかじめ用意していた。 「俺が一度も会ったことがないタイプの大人だから」 「なるほど」  二人はその後、お互いに無言だった。ユージがちらりと横目でタカシを見てみると、相手はこちらを気遣う様子もなく外の景色を眺めており、時々窓を開け風に当たったりもしていた。 「あの」ユージは意を決して声をかけた。 「はい」 「電話ではすいませんでした」 「ロクデナシとか、引き剥がすとか、二度と連絡取らないとか?」  ──覚えていやがった。 「はい。何も知らないのに、興奮してしまって。失礼なことを言いました」 「まともな反応ですよ。母親が大事なのだなと私は感じました。あなたがどう思っているかはさておき」
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