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「牧ちゃんには見せないから、ユージくんも入って」
「いやです」
「だめですか」
「絶対にいやです」
「そうですか。残念だな」
タカシはまったく残念がるそぶりもなく、淡々とスマートフォンをしまった。二人は後部座席に乗り込んだ。車が音もなく滑り出す。
「ねえ」タカシはこちらを見ずにユージへ声をかけた。「なんで私に会おうと思ってくれたんです?」
ユージは質問に対する答えをあらかじめ用意していた。
「俺が一度も会ったことがないタイプの大人だから」
「なるほど」
二人はその後、お互いに無言だった。ユージがちらりと横目でタカシを見てみると、相手はこちらを気遣う様子もなく外の景色を眺めており、時々窓を開け風に当たったりもしていた。
「あの」ユージは意を決して声をかけた。
「はい」
「電話ではすいませんでした」
「ロクデナシとか、引き剥がすとか、二度と連絡取らないとか?」
──覚えていやがった。
「はい。何も知らないのに、興奮してしまって。失礼なことを言いました」
「まともな反応ですよ。母親が大事なのだなと私は感じました。あなたがどう思っているかはさておき」
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