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ホテルの車寄せに到着して、二人は車を降りた。シティは日が沈み、あたりは薄暮から完全なる夜に移ろうとしている。
「夜ご飯って、どこかオススメはありますかね」
「俺に飯の良し悪しはわからないです。調べて差し上げるのが気遣いでしょうが、そういう気は起こりません」
「ユージくんは何でも正直に言ってくれるから楽だ」
タカシが機嫌を悪くするでもなく言ったので、ユージは小さく舌打ちをした。おそらく皮肉ではなく本心だろうという点が、気に入らなかった。
「ホテルのレストランにしましょうか。おごりますよ」
「折半で」
「そうですか。じゃあ折半で」
レストランに入って、席に座り、料理を頼んだ。
「ユージくんってお酒飲まないの」
「酒を飲むとたがが外れそうなんでやめときます」
「普段のことを聞いたんですけど」
「酒も煙草も普段はやりません」
「そうですか。きっと健康優良児だろうな」
「……肺周りが弱いんです。煙草なんて吸えたものじゃない」
「知りませんでした。申し訳ない」
タカシは白ワインを自分で注いで「じゃあ失礼」と言って、相手の返答を待たず飲み始めた。
「この際ですからなんでも聞いてください。あなたに会ったのは諸々手間を省くためですので」
「おいくつですか」
「四十四。牧ちゃんの五つ下です」
「仕事は地方公務員っておっしゃってましたけど」
「ええ。市役所の戸籍住民課、正規職員」
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