Chapter3−3 三人目の祝辞

27/49
50人が本棚に入れています
本棚に追加
/541ページ
「もしも僕が十八年前に牧ちゃんとあなたに会えていたら、どれだけよかっただろう──それだけが僕の本心です。  たぶん、その暴力的な夫が僕のところへ来たところで、僕にとっては特に問題じゃなかっただろうとも思います。先ほど申し上げた通り、僕は他人に共感するタイプではないので、他人の暴言に揺さぶられることもありませんから。暴力沙汰になれば、多少の怪我は免れませんが、傷害罪や暴行罪で相手を退けられます。そして、あなたの父親は僕のような考え方の人間には、最初から手を出さないでしょうね」  ユージは口をポカンと開けて絶句した。  兄であるフィンセント・カリヴァンも、かつてタカシと似たようなことを言っていたことがある。 『犯罪まがいのことをしてくれればむしろ好都合だね、牢屋に入れられるから』。  タカシの慧眼というべきか、父親のオーガスタスはそのような思考回路をしているフィンセントには一切手を出さなかった。 「あなたに対してはもう少し慎重になるべきでしたので、『一度だけ会ってみれば』と牧ちゃんに言いました。するとどうやら話を聞くに、あなたはすでに成人し、自立していらっしゃって、牧ちゃんと付かず離れずという様子だったので、僕はあなたをかまわないことに決めました」
/541ページ

最初のコメントを投稿しよう!