Chapter3−3 三人目の祝辞

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 ユージは、当初感じていた浦添貴志という男への認識を早期に改めるべきだと強く思った。  タカシはまともではない。  だが、マキにこの上ないほどふさわしい。 「友人としてだったら仲良くなれそう?」 「たぶん」 「そうですか。僕には友人が少ないので、嬉しいです」  タカシは他人に共感できないという壁を何度も味わいながら、自分一人で困難を乗り越えるすべを身につけている。これが大人の余裕の正体なのだろうか。 「ユージくんと牧ちゃんとのコミュニケーションが円滑になれば、僕にとっても幸福度が増すだろうと思う。なので、牧ちゃんに言いにくいことがあれば僕を遠慮なく使ってもらえるとありがたいですね。  過去が過去だから、お互いに把握はしておかなきゃいけないけれど言いにくい、という事柄も多くありそうだ。ちなみに、牧ちゃんから『ユージには絶対に言わないでほしい』と釘を刺されている、僕だけが把握していることもあるので、ユージくんも同じようにしてくれれば。そうすれば、いつか緊急の用件があった時に僕が状況を把握していれば何かと対処ができるでしょう。  そうだ、思い出した。僕があなたに直接会って言いたかったことが、これだった。僕のことは牧ちゃん専用連絡ツールとでも思っておいてください」 「あ、いや、そんな」 「僕も酒が入ってしまうと、饒舌になる割に言いたいことを忘れる」 「え、酔ってるんですかいま!?」  タカシの顔は会った時とまったく変わっていない。 「一方的に話しすぎたね。遠慮せずにたくさん食べてください」 「入籍が三年遅れた理由は、結局何だったんですか?」
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