Chapter3−3 三人目の祝辞

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「牧ちゃんが、結婚式の費用を半分出したいって言うから。  彼女があなたに直接言いたくない事柄にも関係していますが……牧ちゃんの特性上、彼女は仕事が長く続かないほうです。だけど、どうしても自分でお金を稼いで費用に充てたいと言うので、僕らは入籍を保留することにしました。入籍して式を待つだけでもよかったですが、そこは彼女の覚悟でしょうね。  挫折しかけて『事実婚でもいい』と言われたこともありましたが、せっかく手をつけたことですし、式はあげたかったので最後までやってもらいました。結果、お金を稼ぐまで三年かかりました」 「知らなかった……」 「僕たちの事情なので、あなたが知らなかったことに罪悪感を覚える必要はないですよ」  タカシはそっけないとも取れるほど軽い口調で言って、さらにお酒を頼んだ。どうやら彼はらしいと、ユージは戦慄した。 「牧ちゃんは不器用ですから、問題をどれだけ後回しにしても、最後には体当たりするしかないんです。彼女のそばにいるからには、その体当たりを全力で支えたい。しかしあなたの問題に関しては、後回しにしすぎて取り返しがつかなかった。それが彼女にとって唯一の後戻りでしょう」  その言葉を最後にタカシは黙った。  自身のこと以外に興味がなく、他人の感情に共感せず、自分にも他人にも期待をしないという言葉の通り、タカシはユージが黙っている限りまったく言葉を発しなかった。聞かれたことにだけ淡々と答え、言いたいことは先程すべて言い終えてしまったらしい。気を遣って相手の言いたいことを引き出すタイプではない。マキがそばにいて安心するのも、少し頷けた。余計なことを詮索される心配がない。  結果として、タカシはまるきりロボットの姿勢と同じだった。
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