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序章
雪の降るそんな幻想的な日だった。
その日は無風で大粒の雪がまるで花びらが舞い落ちるように降り積もっていた。
まだ自分の走る方向には足跡がなくて、こんな美しい風景を彼女と見られたら、
どんなに………
走り回って疲れた足を、それでも酷使して
見つけた彼女は…
とても安らかな顔で
赤い翼をはやして
死んでいた。
残華(ざんげ)懺悔
初夏の朝方8時ごろ、散歩をしていた男性による通報により発見された遺体は、あの日の彼女と瓜二つの姿で見つかった。
「所属されて、は、初めての現場、す…すごく緊張するね。
私ご遺体みるの初めてだから……」
この馬鹿みたいに緊張しているのは
同期入社ということにされている、「國本 鏡(くにもと きょう)」
「俺はしない」
「お前ら駄弁ってねぇで早く来い。」
よく通る大きな声でこちらに手招きをしている仏頂髭の男は、自分のことをボスと呼べという
俺たちの上司だ。
「おや、水野さんじゃないですか。
特課は気楽そうですね。
一課が散々知らべた後にきて、そんな出来立てホヤホヤの課に、いったい何かやることが、あるんですかねぇ。」
警察の中でも、こう言うイビリみたいなのって本当にあるんだな。
ボスはガハハハと笑って「何ができるかやってみないと分からんでしょうな」って言って現場のブルーシートをくぐり抜けていった。
俺たちもそれに倣って入ろうとした。
「おい、お前って、あの外国に逃げたって言われてる元高校生探偵か!?」
ボスが無視するから俺の方に来てしまった。
「だとしたら何だよ。」
「月乃瀬くん、やめましょうよ。」
「月乃瀬?月乃瀬って清太郎か?」
俺たちをイビっていた奴の後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「先輩知り合いなんすか?」
「そりゃ元警察署長の娘さんの幼なじみで俺たちが解決できなかった事件を高校生の時に解決しちまって。
警察に入った途端、外国に連続殺人鬼を追いかけて向こうでも大活躍してた奴なんだぞ。
戻ってくるとは思っていたが一課じゃなくて、出来立てホヤホヤの特別捜査課に入るとはな!
まぁ清太郎らしいな。」
俺たちをイビッてた奴がぐうの音も出ないみたい顔していた。
俺は返事はせずに会釈だけしてブルーシートに手をかけた。
「清太郎!お前が……『ゼウス』を捕まえてくれるって信じてるぞ。」
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