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第1章
雪の降るホワイトデーなんて、綺麗だけど寒くて嫌だ。
そう思う人がいるかもしれないけど、私には切なくて淡い思い出がある。
そう...淡くて白い切ない思い出...
「トンちゃん、おはよー!今日も一番乗りだね」
「せっちゃん、おはよー!うん、まぁね~だって小山先輩見るんだもん」
「今日も目が合うかな?トンちゃん」
「部活の先輩にも挨拶しなきゃだから、大変だよ~」
登校してくる小山先輩を、1階の教室から目で追うのが日課の私。
前髪と寝グセを整えて待ち構える。
(きたっ!あ...部活の1番怖いミキ先輩と一緒だ...どーしよー)
1番嫌なシチュエーション。
「おはようございます!」
ミキ先輩に大きな声でお辞儀した。
(小山先輩もこっち見た!目が合った!
やった!)
ドキドキが止まらない。
そうだ...来週ホワイトデーだけど期待していいのかなぁ、チョコは受け取ってくれたけど...。
ミキ先輩に呼び出された。
「村田さん、これ小山から。あんたが小山のこと好きなのみんな知ってるよ、別にいいけどさ」と渡された手紙。
「は、はいっ。あ、ありがとうございます。お疲れ様でしたー」
(やった!早く読みたい!)
四つ折りになった手紙を開いた。
「明日の朝7時半に、俺の家の近くのそろばん教室の自転車置場に来てください。渡したいものがあります。 小山寿彦」
角張った力強い字だった。
そう、明日はホワイトデー。
思わず「やったー!」と声に出してまった。ドキドキしてる私...。
窓の外はチラチラと雪が降りだしていた。
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