奇妙なベビーシッター

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 実家に戻ると、両親は変わらずそこにた。いや、二年前よりも明らかに顔のしわが増えて、白髪がより白く見えた。頻繁に会っていれば気づかない変化も、二年ぶりだと目立って見える。親が老いていくのを目の当たりにするのは、親不孝な娘にとってもつらいことだ。  そして、三十年近くも生活してきた実家が、まるで他人の家であるかのようによそよそしく感じた。部屋の天井、こんなに低かったかな。リビング、もっと広かったような。久しぶりに戻った我が家は、まるでミニチュアのドールハウスのように狭かった。  両親は多くを聞かずに、ただ、「おかえり」と言って、三十手前の独身で無職の娘を迎え入れてくれた。これ以上にない肩身の狭い状況ではあるが、帰れる場所があって、そこで待っていてくれる人がいる。それだけでも十分にありがたいことだ。独身というのは置いといて、とりあえず仕事を見つけて、自立をしよう。二年間のブランクはあるものの、ただ寝ていたわけではない。フランス料理なら一通り作れるし、スイーツ作りにも自信がある。  小雨の中、近所を散歩していると、顔なじみのおばあちゃんに挨拶された。帰ってきたのね。はい、帰ってきました。相変わらず綺麗ね。ありがとうございます。しばらく日本を離れると、ペコペコお辞儀と愛想笑いができなくなってしまう。これがいわゆる、生き物の環境適応力、というやつだろうか。それなら早く日本人に戻ってくれ。  振り返ると、フランス流の挨拶に慣れるのもかなり時間がかかった。彼らは基本的には、頬を触れ合わせてチュっと音を出す「ビズ」という挨拶をする。「ビズ」は訳すと「キス」という意味なのだが、唇を頬に触れさせずに、キスのふりをするだけというのが一般的だった。フランスに着いたばかりの頃は、すべての人がいちゃいちゃしているように見えた。ビジネスの場では握手が基本なのだが、私の学校ではビズだった。日本人の私にとってこれがどれだけハードルの高いものであったか、みなさんの想像にお任せする。
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