奇妙なベビーシッター

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 電話を切ると、私はさっそく高校の卒業アルバムを掘り出した。「高校」と書かれた段ボールには、卒業アルバムのほか、旅行写真、学校書類なども入っていた。歳をとったつもりは一切ないが、黄ばんだ書類の日付を見ていると、光陰矢の如し、卒業してから、十年が経った。  卒業アルバムで高杉くんを探していると、まず自分の顔が目に入った。恥ずかしすぎて思わずアルバムを閉じてしまった。まるで見てはいけないものを見てしまったような感覚に陥るのは、昔の自分に直面したくないからだろうか。今思えば、高校生の私は、とにかく浮いていた。  私が通っていた高校は、校風が自由で、これといった校則もなく、マイペースで集団行動の苦手な私にとってはかなり快適な環境だった。そして、許容な範囲内であれば私服登校も許されていた。  当時の私は、とにかく群れることが嫌いだった。運動会や文化祭、みんなで作り上げる学校行事にはできるだけ関わらないようにした。勉強はできる方だったが、友達は多くなかった。だからと言って、無理して友達を作ろうとも全く思わなかった。もちろん、部活にも委員会にも所属しなかった。今思えば、人間関係がとにかく面倒くさかったのだと思う。  学校が終わった後、近くのカフェに立ち寄るのが密かな楽しみだった。そのカフェは目立たない外装で、目立たない場所にあった。客の出入りが少なく、いつ入っても静かで、私にとっては隠れ家的な癒しの場だった。振り返ってみると、高校生活の一番の思い出がそのカフェで過ごした時間なのかもしれない。  高杉くんとはクラスが違っていたが、女子にも男子にも人気だったので名前だけは知っていた。当時の高杉くんは、高校生のわりには背が高く、体格もがっちりしていて、スポーツ万能の筋肉マン、というイメージがあった。バスケ部と剣道部を兼部していて、その活躍っぷりは、スポーツに無関心だった私の耳にもよく入った。放課後、部活をのぞきに行く女子たちをよく見かけたので、スポーツのできる男というのは歳に関係なくモテるものだと気づかされた。クラスの女子たちが彼の話で盛り上がっていたのも何回か目にしたことがある。
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