奇妙なベビーシッター

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 その日、私は早めに家を出て、近くのコンビニでおでんを買い、みんなが来る前の教室で朝食をすませようとした。早朝の教室は不気味なほど静まり返っていて、私はおでんを食べながら授業の予習を始めた。はい、私の高校は一応進学校でしたので、勉強はそれなりに頑張りました。柔らかな朝日が差し込み、誰もいない教室にはおでんの香りが漂っていた。しかし、一時間目が始まる時間になっても、私は独りぼっちだった。  いつもマイペースな私だったが、さすがに焦りを感じた。週末でも祝日でもないのに、なぜ誰も来ない。あれこれ考えながらこの状況を不可解に思っていると、剣道着を来た高杉くんが教室に入ってきた。うん、高杉くんだったと思う。 「何してるの。今日は休みだよ」 「え?なんで休み?祝日じゃないのに?」  初対面のはずなのに、くだけた感じで会話できたのは、きっと同級生だったから。わらにもすがる気持ちで私は彼に疑問をぶつけた。 「創立記念日。うちだけが、おやすみ」  ため息交じりのあきれたような返事が返ってきた。  創立記念日。学校の歴史なんて全く興味がない。しかし休みの日くらいは確かに覚えておくべきだった。 「まじか。でもせっかく来たから、少し勉強してから帰るよ」  高校までは遠くはないが、なんだか悔しかった。教室はシーンとしていて、私と彼しかいなかった。それもそのはず、休みの日を忘れる高校生なんて普通はいない。 「ま、がんばれ」  そう言い捨てて彼はどこかへ消えていった。  それ以来、彼とは廊下で何回かすれ違ったことがある。しかし、挨拶も会話も交わすことはなかった。そのお母さんが、なぜ私に会いたいと言ってきただろうか。
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