第6話

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優しく背中を叩く仕草で「咲凪。嬉しいんだけど、このままだと俺の我慢にも限界が」と苦笑いした圭兄が腕をほどいた。 まだくっついていたい。なんて言うのは、はしたないとか思われるかな? ゆっくりと離れて改めて見る圭兄が、いつも以上に何割も増してカッコ良く見える。 顔がタイプかと言われると好きな芸能人の系統とは異なるのに。 恋は盲目って、こういうことも含めて言うのかな。 まさか、圭兄が私のことを好きって…。 まさかの両想いというものだなんて…。 ポーッと圭兄を見つめながら、胸の奥からじんわり拡がっていく喜びを噛みしめる。 目の前ではひらひらと手が動いていた。 「咲凪?」 「え?」 「いや、え?じゃなくて、どうする?咲凪も行く?」 「…ん?」 一人で喜びに浸っている間、圭兄はたしかに何か話していた。 「聞いてなかったか。俺、実家に忘れ物取りに帰るけど、咲凪も一緒に行く?」 腕がほどかれただけで未だド近距離の圭兄にまた見惚れて、何も考えずにただ頷いた。 ちょっと早まってしまったかも。 と、すでに動き出した車の助手席で固まる。 圭兄とのことって親に言うべき? こんな嬉しさが溢れ出したような浮かれた状態だとバレるのも時間の問題かもしれないが。 怪我が治ったら実家に顔を出すつもりではいたけれど、圭兄との交際報告のようなものはするべきか否か。 いやー、結婚相手なら紹介するけどこの歳になってわざわざ恋人報告はしなくてもいっか。 んんー、だけど家族みんな知ってる圭兄だもんね。なんとなくだけでも言っておいた方がいいのかな。 なんて悶々と考え込みながら、いっそのこと本人に聞いてみてもいいのかな?とちらっと横目で圭兄の様子を伺って、あぅっとシートにもたれ込んだ。 何これ?心臓のバクバクとした音が前よりも力強い。 自分だけが好きだって思っていた時よりも好きな気持ち度合いが大きくなっている気がしてならないんですけどーと、明らかに非のない圭兄にこっそりジト目を向けた。
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