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おまけ とあるβは選ばれたかった
ある日目が覚めると僕はβになっていた。
どうやら僕は別の世界から転生したらしかった。何をバカな事をと思うかもしれないが、そうだからそうだとしか言えない。
僕自身とても信じられなかったけど、この世界は僕の知る世界とはまるっきり違っていたから信じるしかなかった。
この世界を知るにつれ驚いたのはα、β、Ωの在り方についてだ。
αが全ての頂点に君臨しているのは僕がいた元の世界でも変わらない。
だけど、あの傲慢なαがΩを心底大事にしている事には驚きを隠せなかった。
Ωをゴミのように扱っていたαが、Ωの事を宝物のように扱い意中のΩに自分が選ばれるように必死にアピールしている。
βもなんだかほんわりした存在で、子どもっぽくいうならみんなが仲良しだ。
違いすぎて戸惑いしかない。
あの特殊な香りのあの子の事は図書室で声をかける前から知っていた。
他のβはあの子の事を『孤高の花』なんて呼んでいたけど、本当はそんないいものじゃない。だけど、ある意味的を得ているとも思った。
あの子は美しい。本来ならあの子を求めて沢山のαが群がるはずだった。
なのにそうはならなくて。
この世界にあっても異質で愛されない迷惑なΩ。まるで昔の僕のようだった。
孤独に美しく咲き誇る花。
だからついβなのに手を差し伸べてしまった。
自分が求めてやまなかった『温かな手』
あの子にはちゃんと愛してくれるαがいたのに。
あの時現れたαを見て分かった。
あぁこの二人は運命で結ばれている。
もしかしたらあの子のフェロモンもこのαの為だけの物だから他のαには受け入れられなかったのかもしれない。
お互いがお互いだけを求めている。
このぬるま湯のような世界にあっても激しく求めあう二人。
正直羨ましかった―――。
自分はどの世界であってもどの性であっても選ばれない。
―――――なーんて、今の僕はβだしシリアスなんて似合わない。もっと気楽に生きていけばいい。βはβらしくβの可愛い子でもみつけるかな。
どうやら僕もこの世界に大分毒されてしまったらしい。
失恋したはずなのに僕の心はそんなには傷ついていない。
あの二人の幸せを心の底から願っている。
僕たちβは難しい事なんて考えない。楽しく生きていければそれでいいんだ。
自分を縛り付けていた何かから解放されようと大きく伸びをした。
誰にとっても優しい世界に少しだけ涙が滲んだ。
-終-
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