でも違うんだ

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でも違うんだ

フェロモンが臭いからといって、別にいじめられているわけでも仲間外れにされているわけでもない。 αからアピールされる事はないけど普通に喋ったりはするし友人もいる。 βは俺の事を何故か『孤高の花』なんてどう勘違いしたのか俺には不釣り合いな二つ名までつけている。 だから俺のフェロモンでαばたばたと倒れていく時、まるで女王様にひれ伏していると勘違してβはうっとりと俺の事を見るんだ。 そして友人以外のαを寄せ付けないから孤高だなんて。 ただフェロモンが臭くてαは近寄ってこないだけなのに。 はぁと小さくため息をつくと大きな手が俺の頭を撫でた。 最近知り合ったβの先輩だ。 名前は知らない。先輩は名乗らなかったし、俺の方もあえて訊こうとはしなかった。 彼はちょっと変わっていて、βなのにっていうのは失礼だけど容姿や能力がαかと思うくらい美しく、優秀なのだ。 最初に会った時俺は、突然の発情期にαの屍被害を出さないようにαが立ち寄らない方の図書室に逃げ込んでいた。 そこに平気な顔をした先輩が現れたものだからびっくりしたんだ。 ぱっと見αに見えたからね。 でも先輩はβだった。 それ以来フェロモンがきつい時にαの迷惑にならないようにここに逃げ込んで、先輩に構ってもらっている。先輩はかなりの勉強家で授業以外の時間はここで一人で勉強しているんだ。 先輩はひとしきり頭を撫でた後、ポケットから出したお菓子を俺の前に出した。 「美味しいよ。遠慮しないで食べて?」 先輩は優しい。 無駄に優しい言葉をかけるわけでもなく、ただ寄り添って微笑んでくれる。カラカラに乾いた俺の心に潤いをくれる。 だけど…ダメなんだ。 俺はΩで先輩はβ。 先輩の事は好きだけどたっくんへの気持ちとは違う。 遺伝子レベルで俺はたっくんの事が好きだから―――。 先輩もその事は分かっているから何も言わずに優しさだけをくれる。 甘えるだけの自分。何も返せないのに先輩に構って欲しくてここに来てしまう。 先輩の貴重な時間を無駄に消費してしまっている。 やっぱり俺は迷惑なΩだ。
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