俺は愛されるΩ

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俺は愛されるΩ

俺たちは獣のように激しく求めあい絡み合った。 ずっとずっと求めていたたっくんの温もり。優しい香り。 初めて嗅ぐたっくんのフェロモン。αは生涯のうちただ一度だけ、番う時だけフェロモンを出す。たっくんが本気なんだと分かる。 嬉しくてうれしくてたまらない。 執拗に攻められ何度もイかされて俺は幸せの絶頂の中にいた。 激しく揺さぶられ脳は甘く痺れて難しい事は考えられなくて、ただたっくんが欲しくてほしくてたまらなかった。 強請るように足を絡めて腰を揺らす。 待ち望んだたっくんの精を最奥に受け、すぐさまがぶりと項を噛まれた。 牙が食い込む痛みさえも甘く感じた。 その瞬間、俺たちの香りがかけ合わさっていく。螺旋状の光の糸が絡み合って別の形を作り出し、弾けた。 降り注ぐ光の粒子と共にふわりと広がるのは甘く爽やかな香り。 これが二人だけの香り。 俺は胸いっぱいに香りを吸い込み多幸感に包まれた。 好き。 幸せ。 そんな気持ちがぽこぽこと生れて、心がどんどんどんどん温かいもので満たされていく。 番とは相手を好きだと思う事に理由なんかなくて、ただただ相手を求め一緒にいられる事にこの上ない幸せを感じるもの。 ***** 無事に大好きなたっくんと番になれて幸せだけど、心に残る小さな棘。 「ねぇ…何で嘘ついた…?」 ごくりと息を飲む音がした。 そして意を決したように真剣な顔になって、話し始めた。 頭がぽやぽやしていて今の状態の俺には難しい事は分からない。だけどちゃんと伝わるようにゆっくりと。 「俺たち……相性が良すぎたんだ…。まだ二次性も分からないようなちびの頃から朱の香りを嗅ぎ取ってた…。それに普通発情期がきてもさっきみたいに性的に興奮状態には絶対にならないはずなんだ。なのに俺はちびだった朱の傍にいるだけでおかしくなっちゃって…両親が心配して子どものうちは朱に会う事を禁じたんだ。まだ幼かった俺には親に従うしかなくて、だから海外に行くなんて嘘言って朱の前から姿を消した。大きくなったら約束通り迎えに行くつもりだったけど、俺と離れてる間に誰かに取られたらと思うと気が気じゃなくて、朱と絶対に接触しないって約束で同じ学校で遠くから見守る事を許してもらったんだ。遠くにいても香ってくる朱の香りに身も心も震えた。すぐにでも番ってしまいたかった…。だけど朱を壊してしまいそうで怖くて―――必死に我慢したんだ。―――あと、芦崎からもそれとなく様子訊いたりしてた。ただ、あいつ隠し事できるタイプじゃないから俺たちの事は内緒だったけどな。勝手な話だけど――――いつも朱の傍にいられるあいつの事が―――羨ましかった」 たっくんの話は俺の事が好きですきでたまらないって聞こえる。 本当に? だって俺のフェロモンは――――ラフレシア。 興奮だとか他のαに奪われるとか――。 この香りのせいでずっとたっくんの事を信じ切る事ができなかった。 番になった今でも……。 「俺のフェロモン…ラフレシア……だったんだよ?」 「俺には甘く誘う愛しい香りだ。あんなそそられる香り朱以外に感じた事なんてない。大好きだったよ。これからは二人の新しい香りになって嗅ぐことはできないけれど、俺は覚えてる。ずっとずっと死ぬまで覚えてるから。―――海外に行くだなんて嘘ついてごめん。寂しい思いをさせてごめん。これからはずっと一緒にいる。朱緒、心から愛してるよ」 たっくんは愛おしそうに微笑んで優しいキスをくれた。 全部ぜんぶたっくんのせいじゃないのに。 たっくんだって両親に言われてどうしようもなかったんだ。 たっくんも俺と同じように辛かったんだ。 俺たちの絆は本物だった。 胸が熱い。 あんなに嫌だったラフレシアの香りもたっくんは好きだって言ってくれた。 死ぬまで覚えててくれるって……。 不安で不安でたまらなかったのに、たっくんの言葉で心に刺さったままだった棘がポロリと取れて消えて行った。 今なら好きだって胸をはって言える。ラフレシア、俺のフェロモン(香り)。 もう二度と香る事のないフェロモン(香り)に愛しさと少しの寂しさを覚えた。 たっくんの胸に顔を埋めすりすりと頬ずりをするとたっくんはくすぐったそうに笑いながら抱きしめる腕に力を込めた。 二人だけの香りが優しく俺たちを包み込む。 これからはずーっと一緒だよ。 『迷惑なΩ』だった俺はこの日からたっくんだけの『愛されるΩ』になった。 -終- ※おまけ あります。
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