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イデラの仕事
夕方。人々で賑わうジャイカに着いた2人は、さっそく質屋に向かった。マホロバが盗んだ金の腕輪は16万円になった。店を出て、外に停めていた車に戻る。
「ほら、約束の分け前。8万円だ」
車内でミカヅキに札束を渡す。
「ん〜。そこをちょっとおまけして10万円にしてくれない?」
「何がちょっとだ、ぼったくり運転手」
「え!?気付かなかったけど、お姉さんすごく美人さん!ファッションもいけてる!目つき悪くてクール!」
「おだてても無駄だ。さりげなく悪口入れんな」
「…ちっ。8万円ねぇ…これから仕事と住める家を探さなきゃいけないのに、頼りない財産だわ。どうせならもっと高価な物盗んでほしかったんだけど」
「………」
「ま、ありがたく頂戴しまーす。じゃ、ここで解散ってことでいい?」
「あんた、家も仕事もないだろ。大丈夫なのかよ」
ゼロからスタートを切る一人の娘が、今後どうするのかがマホロバは少し気になった。
「さあー…ま、あたしみたいなはぐれ者でも雇ってくれる仕事を探すわ。この誰のものか分からない車を家にするのも悪くないわね」
「そうだな…一応、あたしの電話番号を渡しとこう。あたしが今まで利用してきた、ネット上で依頼を受ける仕事なら紹介できる。中にはやばい仕事もあるけど自由に選べるし…まあ困ったら電話しろ」
マホロバは先ほどの査定額の領収証の裏にボールペンで番号を書いて渡した。
「え、ありがとう。あたし携帯も持ってないけど」
「電話ボックスはどこにでもあるだろ」
「あんたは?これからどうすんの?」
「あたしはまた依頼を選んで仕事しに行く。まあこれまで通りいろんな土地を渡り歩きながらうまくやってていくさ」
「そう。頑張ってね。じゃ、シーユーアゲイン!」
「あんたも達者でな」
ミカヅキの車がどこかへ走っていくのを見送って、マホロバは裏通りにある安いホテルに入った。
シャワーを浴びたあと、セットが乱雑なベッドに腰を下ろして携帯を見る。
マホロバの生活の基盤になっている、『イデラ』という仕事依頼サイトを開く。依頼人と請負人どちらにもなれて、依頼内容や報酬はピンからキリだ。マホロバはこれで様々な場所での依頼を受け、いろんな地を渡り歩いて収入を得ながら生活している。
いつものように依頼リストの画面を見つめる。
(…暗殺か…報酬高いな…いやいや、殺しはさすがに。…行方不明のペット探し…鳥なんて外に出たらもう見つかんねーよ。選挙活動のサクラスタッフ美人募集…。ん?)
リアルタイムで条件の良い依頼が新着で表示され、まじまじと説明欄を読む。
(報酬10万円、定員2名…これは美味しい!そうだ、せっかくならあいつ…ミカヅキを誘ってやって一緒に…)
と思ったが、ミカヅキは携帯を持っていないためこちらからは連絡ができないことに気付いた。
(よし、ラクそうな仕事だしやってみるか)
マホロバが受諾ボタンを押した数分後、やはり条件の良い依頼なだけあってすぐにもう一人の枠が埋まった。
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