家が一番好き

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私は小さい頃からふざけるのが好きだった。 小学校低学年までは渾身のギャグをクラスメートの前で披露できるほど肝も据わっていて、お調子者せっちゃんなんてあだ名を自分で付けて広めようとさえしてた。 それが、小学校4年生の春から、いじめを受けた。 今まで仲良くしてくれて、私を面白いと言ってくれていた友達が全員、次の日から私のことを、やってること全部気持ち悪い、と言って貶し、嘲笑い、無視した。私はそれからずっとボッチだった。 多分、お調子者せっちゃんは調子にのり過ぎていたのかもしれない。 披露したギャグで笑わせるどころか引かせたのかもしれない。 その日以来、私は素の自分を封印した。 本当は家でも封印しようと思ってたのに、学校で我慢してるせいか、家に帰ってくると抑制が効かなくて、ふざけ具合はエスカレートしてしまった。 両親はそんな私を精神科にまで通わせようとしたので、病院嫌いだった私は「ごべんだざいっ!もうアホなごどじまぜんっ!ごめんだざいっ!」と泣きながら謝ったお陰か事なきを得た。 それで、大学卒業後、一人暮らしを始めて、ついに私は自由を得た。 自分だけのお家。ふざけ放題。 家では素の自分に戻り、一歩外に出れば物静かで控えめ、無口な女を演じる。むしろそうしてきた時間が長いせいか、外ではそうしてる方が楽で。 いつのまにか、人との交流が生きる上での最大のストレスになってしまったし、一人でいる時間が一番好きで、人からは自然と距離を置かれるタイプになった。 家の私は素の私、外の私は作り上げた私。 でもどちらも、私だ。
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