家が一番好き

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家が一番好き

会社では真面目で大人しく消極的と思われる私も、ひとたび家に帰れば陽気なキャラクターへと変貌する。 というか、これが素。 土曜日なんて最高の日だ。 朝から休みで、翌日も休み。つまりこの小さな1Kで、一日中自分らしく、自分の好きなようにしてられる。 髪型を弥生時代風にして、火男(ひょっとこ)のイラストプリントに一目惚れして購入した部屋着専用の真っ赤なパーカーを着る。 切ない恋歌を歌手よろしく感情的に歌って掃除をし。 「さあ今週も始まりましたっ!せつ子の3分間クッキング~!」とありもしないカメラに向かって料理実況しカップラーメンを作る。 動画サイトでアイドルのダンスを練習し、録画して一人笑いながら観賞、その後削除。 ソファで寝転がりながら漫才番組を見て、大袈裟に大爆笑した後は、鏡の前で一人漫才。 「なんやかんや言うてますがワシ、こう見えて88なんですー。聞いてへんわ。けど精神年齢は3歳なんですー。もうええわ!どもっ、ありがとうございやしたぁ~」なんて、全く面白くないのに、やってる自分が面白くて笑い転げる。 こんな、薬でもやったんじゃないかと疑えるレベルに家ではふざけているなんて、外の人間には絶対知られたくないし、死守する秘密だ。
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