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明らかに異質なものを見るような顔をしており、汐もそれに対して敵意を込め、無言で睨んだ。
それでも、繋いだ手は離さなかった。
「石井……だよね。瑞希と仲よかった」
「あ……うん、そう。覚えててくれたんだ。あの、少しだけ天使君と二人で話したい……んだけど」
「何でいきなり?」
「へ、変な意味じゃないよっ。天使君に謝りたいことがあって」
石井は伺いを立てるように、深見の顔と汐とを交互に見ている。
謝りたいなんて汐を連れ出す口実かもしれない。
子役時代のことを目の前で勝手に検索されたこともあり、彼女への好感度はマイナスだった。
そんな事情など知らず、深見は「行ってきたら」と、汐に耳打ちする。
深見に促されなければ、どう考えても裏がありそうな石井の誘いに乗ることもなかった。
一本外れた通りで立ち話なら、と汐はしぶしぶ了承した。
車止めに腰掛けた汐は、ついさっきの選択を取り消したくなっていた。
足元でしゃがみ、石井はぐずぐずと泣き始めたからだ。
「……ねえ、話すことないなら帰っていい? 別に学校で話してもいいよ。秘密にしておいて、って強要する権利もないし」
「ちがっ……そんなつもり、ない。あたし、天使君にすごく酷いことした……ごめんなさい」
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