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「それとね。ほら。誠吾さんが一人のときでも寂しくないように、家族が増えましたー」
「え、ああ……この前のやつか。やっぱり欲しかったんじゃないか」
「……こっちは玉砕覚悟のデートだったので」
今や玉砕の一字も頭をよぎらないくらい、交際は順調だ。
落ち着いたトーンのインテリアの中で、海の生物達は少し浮き気味だった。
「美味しそうだな、カレー。どれだけ掬っても具しか出てこない」
「この前キャンプに行ったじゃん。お父さんが張り切っていろいろ用意してたから、ほとんど余っちゃったんだよね。それで、全部カレーに入れてみたら食べられるんじゃないかって」
自給自足の本格的なものではなく、創一が連れて行ってくれたのは流行りのグランピングだった。
食材や調理器具は全て用意されているし、テントはウッドハウスの上で初心者でも快適だ。
汐が参加するのは高校一年のとき以来だったので、そのせいか創一がえらく張り切っていたのを覚えている。
汐の食が細く、肉と魚介を余らせてしまい、宿泊した翌日の朝と昼の食事は、それらを入れたカレーになった。
「ね、ね? 美味しい?」
深見の腕に纏わりつきながら、汐は感想をねだった。
大きい肉の欠片を一口食べたきりで、次の一口を運ぼうとしないので不安になる。
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