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だから、今後味が落ちても許してね、と汐は半分ふざけて言った……つもりだった。
深見に向けてぱちん、と茶目っ気たっぷりのウインクを飛ばす。
けれど、深見は微笑むこともなく、能面のように無表情を貫いていた。
──え、えぇ……。冗談通じないタイプなのかな。
愛想と色気の塊で出来ている友人から学んだノウハウは、深見には通じなかったらしい。
……恐らく、汐の実力と実践不足が原因だが。
「はあ……汐君が可愛い。好きだ、好きすぎて……いつでも汐君のことしか考えられない」
がばっと厚い胸の中へと抱かれて、汐の身体は背中からソファへ着地した。
最近の深見の行動は唐突で、汐の予想の遥か斜め上をいってしまう。
汐ががむしゃらに深見に想いを伝えていたとき以上に、深見の好意はパンパンに膨らんでいそうだ。
「あ……の、誠吾さん。Glareが欲しい。すごく濃いの……」
「ああ。気が付かなくてすまない。僕のために美味しい料理をつくってくれてありがとう」
「ん……あ」
深見のGlareは格別だ。
きっとあの事故の日、出会ったのが深見でなければ、汐はSubdropから戻ってくることは叶わなかっただろう。
覆い被さる深見と視線を絡め、汐は意識をそのまま委ねた。
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