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高級なラグジュアリーブランドのショップが並ぶ通りは、男女のカップルだらけで汐は萎縮してしまう。
もちろん同性同士のDomとSubのパートナーシップも珍しいことではないが、そもそも第二性を持っている数自体が希少だ。
隣を歩いていると、時々深見の手の甲と自分のものが触れ、その度に意識していないよう他人に見せるのに必死だった。
「よかったら手を繋がないか」
「え、でも」
周りの視線が気になる。困惑して返事の遅れた汐に、深見は恋人らしい行為を強要することはなかった。
自分のプライドを守るばかりで、深見を傷つけているような気がした。
汐は恐る恐る深見の空いている右手を取った。
「……誠吾さんを好きな気持ち。他人に遠慮しているのはもったいないと思ったので」
白昼の舗装路の上で、汐は深見に視線を傾けながら堂々と歩いた。
灰茶色の瞳が汐を包み込むように、甘く蕩けている。
Glareは出ていないのに、奥深い色の瞳を見つめていると幸せな気分になる。
「え、天使……くん」
二人の空間を裂くように、声が割って入る。
名前を呼ぶ彼女が誰なのか分からなくて、汐は数秒顔を見つめ返した。
彼女の視線は汐とは逸れていて、繋いだ手のほうへ注がれている。
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