愛されSubは尽くしたい

8/25
前へ
/203ページ
次へ
明らかに異質なものを見るような顔をしており、汐もそれに対して敵意を込め、無言で睨んだ。 それでも、繋いだ手は離さなかった。 「石井(いしい)……だよね。瑞希と仲よかった」 「あ……うん、そう。覚えててくれたんだ。あの、少しだけ天使君と二人で話したい……んだけど」 「何でいきなり?」 「へ、変な意味じゃないよっ。天使君に謝りたいことがあって」 石井は伺いを立てるように、深見の顔と汐とを交互に見ている。 謝りたいなんて汐を連れ出す口実かもしれない。 子役時代のことを目の前で勝手に検索されたこともあり、彼女への好感度はマイナスだった。 そんな事情など知らず、深見は「行ってきたら」と、汐に耳打ちする。 深見に促されなければ、どう考えても裏がありそうな石井の誘いに乗ることもなかった。 一本外れた通りで立ち話なら、と汐はしぶしぶ了承した。 車止めに腰掛けた汐は、ついさっきの選択を取り消したくなっていた。 足元でしゃがみ、石井はぐずぐずと泣き始めたからだ。 「……ねえ、話すことないなら帰っていい? 別に学校で話してもいいよ。秘密にしておいて、って強要する権利もないし」 「ちがっ……そんなつもり、ない。あたし、天使君にすごく酷いことした……ごめんなさい」
/203ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1254人が本棚に入れています
本棚に追加