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扱いに困り、汐は呆れたように空を見上げていた。
交友関係が派手で広い島長の隣にいるせいか、汐も同類のように扱われる。
島長なら同じ目線にしゃがんで、頭でも撫でてやるのだろうか。正解が分からない。
ただ突っ立っているだけで、何もしない汐は傍から見れば薄情者以外の何物でもないだろう。
緩く羽織ったシャーリングシャツが、地面に擦れて汚れている。
「だから、何? 子役だってバラしたこと? 慣れてるからいいよ。酷いとか思ってない」
「ち、違う。……冗談で、島長君と付き合ってんの、って言ったこと」
「……は?」
──何それ。謝ること?
腑に落ちなくて、汐は不機嫌全開の短い返答をしてしまう。
汐の気を悪くしたと思ったのか、石井は薄い肩をびくりとさせた。
「天使君が気にしてるなら……それもごめん」
「……こっちは何とも思ってないのに、謝られると気味悪い」
うん、いいよ。で返せば早く深見の元へ帰られるのに、大人気ない。
そもそも大事な日に水を差してきたのは相手からだし、汐は全く悪びれなかった。
石井は汐の子供じみた態度にもめげず、必死に言葉を取り纏めていた。
「天使君は……さっきの人と、付き合っているんだよね。知らなかったとはいえ、あたし……茶化すようなこと言って」
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