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汐が手に取ったのは、中央にアクアマリンが埋め込まれているColorだった。
ラテン語で「海水」という意味を持つ名前のアクアマリンは、汐の透き通るような髪の色に似ている。
指先にも満たない小さな石の中に、まるで海を閉じ込めたような姿をしていた。
他にも汐の淡い瞳の色と同じコーパルやトパーズが装飾されたColorも一通り見て、やっぱり最初に惹かれたColorに決めた。
他のColorは下げてもらい、部屋は汐と深見の二人だけになった。
「素敵なColorだな。汐君には敵わないが」
「も……やめてよ。恥ずかしいよ」
留め具を外したColorを、汐の細く白い首に宛てがう。
柔らかく締めつけられる感触に、Subとしての至上の喜びを感じていた。
「愛してる。本当に……夢みたいだ。あのとき子供だった汐君を好きになるなんて」
「僕も……夢みたいって思う。ずっと、誠吾さんに振り向いて欲しくて。好きって言って欲しかった」
「今は僕のほうが汐君を好きだからな」
重ねるように深見が言った。
目を細めて笑うと、涙の膜はあっけなく崩れて、まともに深見の顔を見られなかった。
その言葉に偽りがないことを、強い抱擁を通じて知る。
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