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「お母さん、泣かせてごめんね」
──汐、お父さんに約束したのに。
見ていたらきっと叱られるだろう。
包帯をしている手で、ベッドの縁に縋りつく紗那の頭を撫でると、もっと声を上げて泣く。
お母さんがこんなにも泣いているのを見るのはいつ以来だろう。
黒い服を着た大勢の人がたくさんやって来て、紗那は汐の知らない大人達に何度も頭を下げていた。
「大きな事故だったと聞いています。幸い、汐くんは小さな怪我で済みました。……ただ、手の指に関しては、外傷とは異なるように思いますが。念のため、こちらで第二性の検査を行いました」
Badtripを起こしたり、Subが過剰なストレスを感じるときたす自傷行為に似ている、と医師は続ける。
「結論から申しますと……汐くんは、Sub性にあたる可能性が高いです。多くの例は、第二次性徴期とともに第二性を獲得すると言われています。汐くんの場合はかなりレアケースです」
「そう、ですか……。私達はNormalですので、どうしたらよいか……」
「年齢の低い子供は、心も未成熟です。これはご両親や周りのサポートが必要不可欠ですから。私達も尽力致します。一緒に汐くんを支えていきましょう」
自分の名前が時折出ているのに、何だか他人事のような感じだった。
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