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一人でゆっくり眠るのは久しぶりだ。
最近は狼人間絡みの事件で、夜も出歩くことが多かった。気が張ってとても安眠できる状態じゃなかったし、そもそもあの街は深夜でも騒がしい。風と木々の騒めき、時折フクロウの声しか聞こえないこの場所は、リフレッシュには最適かもしれない。
……とは言っても、流石に二人が遅くまで外にいるのも心配だ。
あの二人なら大丈夫。いや、僕が心配する方が無駄だろうけど。昼に先生自身が「ここには危険な野生動物もいる」とか言っていたじゃないか。もしも襲われて、食べられてしまうなんてことがあったら……
「……いや、先生だって狼か」
よく考えたら、先生こそ一番危険な動物だった。
まぁあの二人なら、自分の身は自分で守れるだろう。朝までには帰ってくるだろうし、それまで僕は安らかな眠りを……
「ライカ‼︎ なに寝てんのよ‼︎ 」
窓がどんどん叩かれて、僕は思わず飛び起きる。
なんだ、置いて行った癖に叩き起こすなんて。常識はずれにも程がある。
「ラピス先生が変な男に絡まれてるの‼︎ もしかしたら狼人間かも……」
それを聞いた途端、僕の眠気はすっかり冷めた。
アンジュが僕を呼びに来たと言うことは、彼女ではどうにもならない事態が起きたということだ。それも狼人間絡みなら、僕が行かなければどうにもならない……呑気に安眠している場合ではないのだ。
「案内して。近くまで行ったら、アンジュは安全な所へ」
「……分かった。お願い」
僕達は窓から飛び出して、夜の森へと踏み込んだ。
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