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暗い森の中で、四つの金の光が交錯していた。
光は互いにぶつかり合い、離れ合い。辺りの湯崎や花々は、光が衝突する衝撃で、絶え間なく騒めきを上げていた。
「なかなかやるねぇ……君、ベルベットのお仲間かい? 」
頬に赤い線を走らせながら、ラピスはぺろりと舌を出した。
滴る深紅の雫を舐めとると、じっくり味わうように飲みこむ。そして相手が距離を取って着地したのを確認すると、再び体を低く構えた。
「あんな雑魚と一緒にするな。お高くとまっているだけで、実際は旦那にべったりな奴だろうが。あれでよく『群れ』に入れたもんだ……」
「へぇ。やっぱり『群れ』の一員か。なんだか適当に質問していれば、君から色々と聞き出せそうな気がしてきたよ」
次第にラピスの傷は塞がり、いつもと変わらぬ顔に戻る。
(ライカ君遅いなあ。アンジュ、私が疑ったから気を悪くしたかな? )
ラピスがそう思った瞬間、男が再び飛び掛かってきた。
咄嗟に横に跳び、近場にあった木の上に登る。しかし男は即座に向きを変えると、木の根本目掛けて勢いよく拳を打ち付けてきた。
「待て待て。木登りしている時にそれはまずい」
「俺には好都合なんだよ‼︎ 」
男の拳が木を貫き、べきべきと鈍い音を立てながら崩れ落ちる。
枝から枝へと何とか飛び移り、ラピスは足を曲げて着地する。しかしそこには隙も生まれる。倒れた木の向こうから、男が拳を振り上げて飛びかかった。
「あぁ分かった話し合おう。君は話が分かる男だと思うんだが」
それが叶わぬことと知りながらも、ラピスは取り敢えず尋ねる。
返答はもちろん無し。代わりに返されたのは、鋭い拳の一撃。
「っ……今のは効いたなぁ」
顔を歪め、殴られた腹を抑えるラピス。
「夜の運動にはちょっとハードすぎるよ。もう少し気楽にやらないかい」
「ほざけ」
男がとどめを刺そうと再び迫る。
するとその時、森の奥から足跡が聞こえてきた。
(……アンジュとライカ君かな? 良かった。これで百人力だ)
ラピスは小さな希望を抱き、瞳を金色に輝かせた。
確かにその足音は、ラピスに取っての救いとなった。
しかし現れたのは、彼女が期待した人物ではなかった。
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