【1】出先と森

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 けたたましい獣の声が響いたかと思うと、唐突に男の背中が切り裂かれた。  続いて足に無数の影が纏わり付く。男の服に無数の牙が突き刺さり、柔らかな布を引き裂いて肉へと食い込んだ。  赤黒い血が吹き出し、森の地面に鉄の匂いが広がる。男は迫り来る影を振り払いながら、後ろに向かって大きく飛び退いた。 「なんだ、こいつら……⁉︎ 」  獣の数は五匹。森の夜闇に紛れ、金色の瞳がちらちらと動く。 「狼人間(ルー・ガルー)か? いや、これは……」  しかし男の言葉が続くことはなかった。  再び獣達が走り出し、男の周囲を取り囲む。低い唸り声が響き、いつ襲い掛かろうかと見定めるようにゆったり歩く……空気が冷たく張り詰める。 「困ったな。君達が来るとは……」  ラピスが短く呟く。 「ライカ君を呼ぶんじゃなかった。色々とまずい」  そう言いながら、男の様子をちらと見る。  男はにじり寄る獣達に、流石に不利を感じ取ったのだろうか。憎たらしそうにラピスを一度睨むと、大きく上に跳躍して闇の中へと消えていった。 「……はぁ。『群れ』か」  ラピスは少しの間、男が不意打ちしてこないか警戒していたが、やがてその心配がないことを感じると、短く息を吐いて力を抜いた。そして周囲をもう一度見渡すと、未だに唸り声を上げる獣達を置き去りにし、森の中へ姿を消した。  フゥゥゥゥゥ……  ウゥゥゥゥゥ……  後には瞳を爛々と輝かせた、四つ足の獣達が残された。
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