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「やぁ。遅かったね」
宿に戻ると、先生は窓辺の椅子に座ってくつろいでいた。
「『やぁ』じゃないですよ。どこ行ってたんですか」
「アンジュから聞いてないかい。怪物と一戦交えていたんだが」
けろっと答えられても困る。
見たところ傷跡は無いけれど、先生は怪我してもすぐに治ってしまう。外見だけでは実際に負ったダメージや疲労が測りきれないし、傷がないのをいいことに無理をしてしまうこともあるから……念のために確認はしておきたい。
「無事ならいいですけど、どんな奴でした? やっぱり狼人間? 」
「間違いないね。自分から『群れ』の一員だって言ってたし」
「群れ」。先生から名前だけは聞いたことがある。
前に聞いた時は、それとなくはぐらかされて終わってしまったけれど。実際に襲ってきたなら、ちゃんと相手の正体くらいは知っておくべきだろう。
「そろそろ教えてくれませんか? その『群れ』って奴のこと」
「……君には関わって欲しくなかったけど、こうなったら仕方ないなぁ」
先生は珍しく観念したのか、短く息をするとこちらを向いた。
「簡単に言ってしまえば、強い力を持つ狼人間の集団だ。この前戦ったベルベットと同じくらい……いや、それすら超える奴も所属しているかな。私からすると、最も厄介で面倒な組織だね」
その言葉からは、珍しく焦りが感じられた。
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