【1】出先と森

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 僕達が降りたのは、ラシェラ山地の南端にある駅だった。  以前は龍が出ただのなんだのと騒いでいたこの地域も、最近はすっかり大人しくなったものだ。最も一部の集落では、まだ古い信仰が根強いようだけど。 「それで先生、宿はどこなんですか」 「焦るんじゃないよ。のんびり行こうじゃないか」  それは結構だけど、僕達の荷物を置いてからでもいいじゃないか。 「大して重くないでしょ。びーびー言わないの」 「そうだぞライカ君。小さなことでうじうじする男は嫌われるぞ」  恐らく今後の僕の不満は、殆どこれで片付けられるのだろう。  ラシェラ山地は僕達の住む街からはかなり離れており、汽車を使っても五時間はかかる。特にこの辺りは交通の便も悪く、一日に一回しか汽車が来ない。それ故街の人々は、滅多なことではここに来ない……僕も初めての場所だ。 「さぁ宿まで歩こうじゃないか。あそこの遊歩道を通ると近道なんだ」  よかった。ちゃんと宿には行くようだ。 「早くても一時間半くらいで着くよ」  地味に遠い。  狼人間(ルー・ガルー)と戦うよりはよっぽど楽だけど、それとは別の意味で辛い。 「送迎車とか無いんですか」 「つまらない事を言うんじゃないよ。己の足で歩くのが面白いんだ」  そう言って、先生はずんずんと先へ行く。 「一時間半くらい余裕でしょ。なんなら全力疾走しない? 」 「アンジュの体力がどうかしてるんだよ」  僕の知り合いの女性陣は強い。
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