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そんなこんなで、宿に着いたのはきっちり一時間半後。
こじんまりとした部屋に荷物を置くと、くつろぐ間も無く先生は立ち上がった。
「さてさて。それじゃ今更だが、今回の旅の予定を説明しようか」
「予定って……やっぱり新作書く訳じゃないんですね」
薄々気づいていたけれど、仕事をする訳じゃないのか。
「まぁそれはそれでやるよ。この周辺は人が手をつけていない大自然が残った場所だ。道も完全には整備されていないし、危険な野生動物だって沢山いる。毎年山に入った人間のうち、数人は死んでいる素敵な地域なんだよ」
遊園地にでも行くかのように、とんでもない事を話す先生。
「私達はここで数日間、まったり旧友に会ってこようと思う。君達は着いてきてもいいし、好きな場所に行っていてもいい」
「旧友? 」
「昔色々とあったんだ。あまり余所者は歓迎されないと思うけど……その時は私が説得してみるよ」
聞けば聞くほど「会わない方がいい」という気分になる。
最も先生のご友人だ。僕達がいたら邪魔かもしれないし、ここは身を引いた方がいいのかもしれない。
「じゃ、そちらは先生だけで……」
「あたしも……」
「よし分かった。私がいないからって、あまりハメをはずすんじゃないぞ」
そう言うと、一番ハメを外しそうな先生は颯爽と外へ出る。
入り口の扉ではなく、清々しい風が入ってくる窓からだけど。
「何でそこから出るんですか⁉︎ 」
「近いからいいだろ。夜には帰るよ」
答えにならない答えを残し、先生は山の方へと歩き去った。
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